【寄り添う市政を目指して】

新年度が始まっています。3月の所信表明で29年度の重点施策や思いなどを話したのですが、最後の部分について多くのご感想をいただいたので文字と合わせて動画を載せます。なお、所信の全文はこちらから読めますので、お時間ある方はご覧いただければ幸いです。

http://www.city.tsukuba.ibaraki.jp/14278/14279/206/1700/020751.html


最後に,私が掲げる,市民に寄り添う,市民第一の市政とはどういうことか,お話をしたいと思います。
今から10年ほど前に,市民から1通のメールをもらいました。その方のお子さんは出産時の医療事故で重症仮死により脳死に近い状態になり,呼吸器とともに24時間介助が必要な状況になりました。大変な状況の中,つくば市役所に支援のための相談に行っても,前例がないから様々な補助が出せない,との一点張りでした。

例えば,重度身体障害者訪問入浴というサービスがあります。当時,このサービスは障害「者」のみが対象で,障害「児」,つまりこどもは利用できませんでした。ご両親にとって,複雑な機器に気をつけながら入浴を行うことは大変なことです。こどもも対象にして欲しいというリクエストもなかなか聞いてもらえませんでした。重度障害児のための吸引器や移動用のバギーも,前例がないとのことでなかなか認められませんでした。お母さんは,「娘がこのような状態になって辛い思いをし,どうして役所でまたこういう辛い思いをしなきゃいけないんですか?」と窓口で涙を流すような状況だったとのことです。
雛姫ちゃんと名付けられたその子は,ちょうど私の長男とほぼ同じ時期に生まれていました。私はそのメールを読んでいても立ってもいられなくなり,その方の自宅に伺いました。24時間,ひとときも目を離せない状況の中で,お父さんは誰を恨むわけでもなくおだやかに,「この子の支援だけを求めているわけじゃないんです。この子は,いつまで生きられるかわからない。だからこそ,次に同じような状況で生まれたこどもや家族が悲しむことがないように改善してもらいたい。それが,この子が生きた証になると思うんです。」そう話してくれました。

ご両親の思いを受け,私も微力ながら働きかけをしました。ご両親の懸命な思いが結実し,訪問入浴の対象がこどもにも拡大となりました。お父さんから,これらのことによって「生活の質が上がって在宅介護が素敵なものとなり,その後,事故などで同じような状況となった他のご家族も本当に助かっている。」との言葉をいただきました。

雛姫ちゃんは,昨年12月に天に召されました。10年間一生懸命に生き,ご家族を幸せにし,周囲の人も幸せにしました。そして,今も,後に続くこどもたち,ご家族の力になっています。まぎれもなく生きた証を残してくれました。

我々には,雛姫ちゃんが残してくれたものを,どうつなげ,広げていくかという使命があります。それは,訪問入浴の対象者の範囲,重度障害児のための吸引器,移動用のバギーの話だけではありません。悲しい思いをする人を一人でも減らし,誰もが包まれ幸せな社会を実現することこそが,雛姫ちゃんに,そして名前は出なくとも様々な分野で大変な苦労をし,涙を流してきた市民に対し応えることになります。誰もがその当事者になり得るからこそ,想像力とやさしさを持って,市民に接することこそが,市民に寄り添う市政です。今,職員も同じ思いを持ってくれています。

どのような境遇にあろうとも,つくば市に生まれてよかった,住んでよかったと,心から思える市民第一の市政を目指し,新年度に向けて,全身全霊を掛けて市長職を全うすることをお誓い申し上げ,所信と致します。