新年度予算で、民間保育士1人辺り月額3万円の処遇改善を計上しました。
これまでの市政は、民間保育園が「保育園を作りたい」と言ってくれることに対して、その枠を用意してきました。例えば、民間保育園で定員80名とか120名などの新設希望があれば、「市としては200名もの枠が新しくありますよ、だから待機児童は解消しますよ」と言ってきたわけです。
でも、これは待機児童解消にはまったく役に立っていません。問題は、民間で保育士が確保できないことにあるからです。これまでは「民間が保育園を作りたいと言ってるんだから、保育士確保は当然努力してやりなさい、そこは経営努力でしょ」という考え方でした。
で、現実として定員を満たすだけの保育士が確保できない。待機児童も減らない。そんなことが続いてきました。
市長になる前から、そしてなってからも、民間保育園のみなさまと様々な対話を積み重ねてきました。表面的ではなく、問題の本質がどこにあるかを考えるとき、官民格差を是正し、小さな命を守り育てる責任の重い仕事でありながら他産業と比べても月額約11万円低いとされる給与に触れないわけにはいきません。
待機児童は、働きたい人を、失業状態に追い込み、所得面でも困窮させ、社会とのつながりも断絶させてしまっています。子育て世代の所得が増えたり、新しく流入すれば、結果として他のすべての人たちへのサービスの財源を作る循環を起こせます。待機児童の問題はそんな起点だからこそ、私の本でも一番最初のテーマとしました(→http://ow.ly/ghvm308V6sm)。
本来は国の仕事であり、公定価格を大胆に上げるべき問題ですが、国がやらなければ自治体が歯を食いしばるしかありません。おそらく、日本の自治体で月額3万円の直接的な処遇改善をしているところはほとんどありません。そして、東京都のようにすでに条件がいい自治体が月額2万円増を打ち出したので、何もしなければ全国の保育士が東京に吸い寄せられていくでしょう。もちろん、これで十分などとは思っていません。ここからがスタートです。現場を守るために、市民の生活を守るために、そして日本ではあまりにも少ない子育て世代への投資への転換を促すために、つくばは覚悟を持っています。
(写真は、今朝の我が子が通う保育園。月曜日でごきげんななめな三男を担任があやしてくれてます。木造の趣のある園舎、どろだらけになって走り回れる広い園庭、そして愛情を注いでくれる先生たち。この恵まれた環境の恩恵をつくばに住む誰もが受けられるように、そして市外の多くの方がこんな環境で子育てをしたいと移住してくれるようにがんばります。)