新しい国立競技場についてのとても興味深い記事がありました。
・人手不足と資材高騰、むちゃな計画による建設費の高騰
・莫大な維持管理費
って、まさにつくばの話じゃないでしょうか。ただ、大きく違うのは記事の最後にある自民党の河野太郎さんが維持管理費について「国費はむろん、サッカーくじからの助成金による穴埋めも認めない」と言っているところでしょうか。つくばは、積極的に維持管理費出そうとしているようですから。
ぜひご一読ください。なんで台湾にいて日本の記事シェアするのかわかりませんが、頭の中はいつも運動公園ってことで。
—
新国立競技場脅かす「三重苦」 19年春完成、今秋着工(朝日新聞2015年3月8日)
国立競技場(東京都新宿区)の取り壊しが本格的に始まった。その跡地に建てる新スタジアムは、2019年春の完成をめざし、今年の秋に着工する。わずか3年半の工期は綱渡り。日本スポーツ界の「聖地」には、巨額の建設費と、完成後の維持費という二重の財源不安ものしかかる。
■工期 入札不調で半年遅れ
幾多の名勝負を観客たちが見つめたスタンドを、圧砕機が崩していく。
国立競技場の解体工事は週末の7日も進み、すでに観客席の一角は、がれきと化した。入札不調で工事開始が予定より半年遅れた。新競技場本体の着工が今秋に迫る。現場の担当者は「資材を集中投入して、期限に間に合わせる」。
完成期限まで、あと4年しかない。東京五輪の開会式は20年7月24日だが、前年9月のラグビーW杯で、新国立は開幕戦と決勝の舞台となるからだ。機材搬入や芝生の養生を考えると、19年春がタイムリミット。日本ラグビー協会と、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長職を兼ねる森喜朗氏は、「タイトロープ(綱渡り)。つつがなく作業を進めてほしい」。
老朽化した国立建て替えの突破口は、ラグビー界が開いた。11年、「ラグビーW杯2019日本大会成功議員連盟」が建て替えを求める決議をした。「ラグビーがあったから新国立は実現した。五輪ありきじゃない」は、森氏の口癖だ。
実際、東京が16年五輪招致に手を挙げた時は、湾岸部の晴海にスタジアムを新築する計画だった。20年五輪に再挑戦を申請した12年2月、主会場は新国立に書き換えられた。
その年の11月、新国立のデザインは公募46作品からイラク出身で英国在住の建築家ザハ・ハディド氏の案に決まった。
しかし、かつてその奇抜さと建物の実用性を度外視したデザインで「アンビルト(建築されない)の女王」とも称されたハディド氏の案は越えるべきハードルが多く、修正を強いられたのが誤算だった。
森氏は今年1月、新国立競技場の事業主体となる日本スポーツ振興センター(JSC)の新年会のあいさつで、苦しい胸の内を明かした。「私もあのデザインが好きなわけじゃない。でも、仕方がないんだ」。ラグビーW杯に間に合わせるには、今から設計をやり直す猶予はない。
■建設費 予算超過で設計縮小
ハディド氏のデザインを採用したのは、建築家の安藤忠雄氏を委員長とする審査委員会だ。その審査結果を確定した12年11月の有識者会議での安藤氏の発言が、議事録に残る。
「この建築はかなりスケールが大きいのと同時に、技術的な課題もたくさんあります。そのような課題を解決できるのは日本の国の土木建築技術力でしかなかなかつくり得ない(以下略)」。熱弁に他の委員も賛同し、全会一致で決まったが、技術的にも難工事が予想された。
有識者会議はスポーツ団体や音楽業界の代表者らで構成されたが、「サッカーW杯をもう一度」「コンサートを催すには屋根が不可欠」など、それぞれの主張を反映させる利益代表者の側面もあった。建築の専門家は、安藤氏ただ一人だった。
当初のデザインで試算すると、予定した建築費1300億円では足りなくなった。3千億円まで膨れ、下村博文文部科学相が「計画を縮小する」と軌道修正を指示せざるを得なかった。
お金以外の理由でも反対論が沸き上がった。「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を受賞した建築家の槙文彦氏らは「巨大すぎる」「歴史ある外苑地区の風景になじまない」などと指摘。文化人からも賛同する声が相次ぎ、反対運動は盛り上がった。
こうした懸念を反映し、基本設計では規模を約2割縮小。総工費は1625億円とした。
しかし、これは消費税5%時の試算だ。昨今の資材費や人件費の高騰を考えると、「実施設計で精査中だが、さらに増える可能性はある」とJSCも認める。
■維持費 年間35億円、赤字を懸念
巨大スタジアムは、完成したらハッピーエンド、ではない。毎年の維持費も膨大になる。今の国立競技場は7億円前後だが、新国立では年間35億円が必要との試算が出た。それでも、JSCは年間約3億円の黒字を見込む。ロンドンのウェンブリー競技場などを参考に、年間700万円のボックスシート販売など「プレミアム会員事業」で、約20億円の売り上げが得られると見込む。だが、世界のスポーツ事情に詳しいテレビプロデューサーの杉山茂氏は、「富裕層や企業が得意先をもてなす社交場として活用するにしても、料金に見合う質の高いイベントを定期的に催せなければ需要はない」と指摘する。
12年ロンドン五輪の主会場は、今年のラグビーW杯、17年の世界陸上選手権の舞台となり、16年からはサッカーのプレミアリーグ、ウェストハムの本拠になるなど後利用に成功している。新国立の場合は、国の施設だけにJリーグクラブの本拠にすることは想定されていない。
スポーツイベントだけでは赤字になるのは自明で、JSCは人気アーティストのコンサートを年12回程度開く計画だが、そこから見込める収入は年間約6億円。近隣住民に配慮するため、遮音装置を兼ねた可動式屋根を造るコスト、維持管理費を考えると、割に合わない。
自民党の無駄撲滅プロジェクトチームの河野太郎座長はJSCの担当者を呼んだ会合で、完成後の維持費について「国費はむろん、サッカーくじからの助成金による穴埋めも認めない」と念を押している。現在、サッカーくじの売り上げの最大5%を国立競技場の改築に充てる法律があり、13年度の売り上げからは約54億円が改築費に充当された。
http://www.asahi.com/…/%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E7%AB%B6%E6%8A%80…